「高速で走行する自転車に減速を促すため」2018年2月23日に施工された土系舗装箇所を走行するメンバー

「高速で走行する自転車に減速を促すため」2018年2月23日に施工された土系舗装箇所を走行するメンバー。

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2018年3月4日(日)、一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト(以下、グッチャリ)では、恒例となった荒川マナーアップチラシの配布活動を行った。
今回の活動では、マナーアップチラシ配布活動に加え、「高速で走行する自転車に減速を促す」ことを目的として、2月23日に施工された土系舗装箇所の現地確認も行った。
その様子をレポートしよう。

まず、「高速で走行する自転車に減速を促す」土系舗装に関する情報をまとめておきたい。
国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所が、同施策を発表したのは2018年2月14日となっている。詳しくは以下のリンク先をご覧いただきたい。

「高速で走行する自転車に減速を促す対策を実施します!」
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/arage_00000218.html

荒川下流部の河川敷にある「緊急用河川敷道路」(足立区小台一丁目地先(扇大橋右岸上流))において、高速で走行する自転車に減速を促すための対策を実施します。

「緊急用河川敷道路」では、高速走行が原因となる歩行者と自転車の接触事故が度々発生しています。これまで安全対策として、「新・荒川下流河川敷利用ルール」(以下「利用ルール」という。)の策定、周知を図るとともに、看板の設置やイメージハンプの施工等を実施してきました。

このたび、足立区小台一丁目地先の緊急用河川敷道路において、舗装の更新を行うこととなり、高速走行しにくい舗装(※)で施工することとしました。あわせて、自転車等への安全対策として、舗装が変わる地点及びその手前に注意を喚起する看板を設置します。(詳細は本文資料(PDF)別紙をご覧ください。)
(※)高速走行しにくい舗装:飛散防止措置が講じられた砂埃の発生が少ない土系舗装

--以下省略--

件の施工箇所は、扇大橋右岸上流側にある。もともと路面が荒れていたところである。

舗装箇所は約100m。上流側、下流側それぞれ手前に黄色く目立つ「ここから舗装が変わります」という看板が立つが、いずれも河川側(※上流側から走ってきたサイクリストから見て左側)であるため、下流側から走ってきたサイクリストには分かりにくいかもしれない。

今回施された土系舗装とは、土砂に結合剤を混ぜ、固化させたものであろう。
舗装が施工されてからまだ10日ほどだが、すでに路面には自転車のものと思われる轍が生じ、表面から剥がれた砂や小石が浮いている状態である。

「高速で走行する自転車に減速を促す」ために行われた今回の舗装ではあるが、私どもが見て、そして走行体験した限り、その効果は極めて薄いと言わざるをえない。路面からの振動は増え、浮いた砂利などによる違和感はあるものの、ほぼスピードを落とすことなく走行を継続することが可能だからである。
ただし、今後路面に刻まれた轍が深くなることがあれば、状況は変わる可能性があることを付記しておく。

「高速で走行する自転車に減速を促す」土系舗装の様子
(場所:右岸扇大橋上流側付近)

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施工箇所の現地確認を行った後は、堀切駅付近にてマナーアップチラシの配布活動を行った。
活動日は3月にも関わらず、最高気温が20℃を超える暖かな日であり、多くのサイクリストが荒川緊急用河川敷道路を走っていた。短時間の配布にも関わらず、今回は100枚近くのマナーアップチラシを配布することができた。ご協力いただいたサイクリストの皆さんにはお礼を申し上げたい。

 

今回参加者のコメント

今回のマナーアップチラシに参加してくれたメンバーは8名。
本活動に対するコメントを寄せていただいたので、ご紹介したい。

坂梨 昇さん

何度か参加して思う事は、直ぐに止まってお話を聞いてくれる方もいれば、殆どが目も合わさずに通過してしまいう人など、呼び止めるのにもテクニックが必要であり、ビラ配りの難しさを痛感しております。

Mika Kamibayashiさん

チラシを受け取ってくださった方から、今も目の前でながらスマホのママチャリとロードがぶつかってたよとか、一般車の方からは、チームで走ってる集団にドケドケと怒鳴られて怖かったなど、お話をうかがいました。
本当はそういったチームの方たちに伝えられたらいいのですが…。

あと、小台の路面ですが16時ごろに再度とおったら、皆で通った写真の状態より、轍がひどくなっていました。均すことはしないと思うので、これからどんな風になっていくのかなぁ。

橘田 旦さん

当日は暖かな天候のもと、久しぶりに休日ライドに出たとおっしゃる方などにもお話を伺う事ができました。足を止めてくださるみなさんの多くが、荒川の、とりわけ下流のサイクリングロードでないエリアでの走行では、球技を楽しむ人や、ランニングをする人たちとの接触事故などの危険性を少なからず感じつつ走っていると話す方もおられ、たまたまかも知れませんがそれなりに意識を持っておられる方も多いことを実感しました。その一方で、見向きもしない輩も少なくなく、活動の難しさを痛感するとともに、地道な活動を継続し輪を拡げていく事の大切さを改めて感じました。
自転車対策用の道路施策については実際に走って見たものの、目的が何なのかをそもそも私自身が理解できていないまま臨んだため、ただただ走り心地の悪さや轍の危険性、設置者の広報活動の不足、標識設置の不整合などが目についてしまい、ネガテイブな反応しか出来ませんでした。おそらくこうした感想を持っているのは私だけではないとおもいますので、設置者にはもう少しこの施策の意図・目的・ゴールなど多くの人にわかり易い情報発信をしてほしいと感じました。

沖本 信之さん

止まって話を聞いてくれるような人はそもそも自転車で暴走はしない。
暴走するような人たちは、こちらから挨拶をしても返事もしないし、止まろうともしない。
そういう人達に自分たちがしていることがいかに危険か、いかに周りに迷惑をかけているかをどう伝えてやめさせるか。
過去、警察官と一緒にチラシを配った時も止まらない人達がいたし、難しいですね。一部の人のために大勢の人達が犠牲になるのは納得がいきませんが、仕方がないのかもしれません。

それでは何のためにチラシを配るのか。
チラシを配って話をすることによって、荒川で暴走自転車が問題になっていること、その対策として舗装が変わったことを知ってもらえる。
その話を聞いた人たちが周りの人達に話してこのことを広めてもらえる。出来るだけ多くの人たちに現状を知ってもらい、一人一人が模範となるような運転をしてくれるようになれば、状況は少しずつ良くなっていくと思います。ただ長い時間がかかると思いますが。

今回対策としてなされた舗装は、少しずつ縦の細い轍が増えていってかえって危険だと感じました。
しかも危険なのは暴走している人達より、むしろスピードが出せない初心者や子供、お年寄り。
スピードを落とすことでハンドルを取られやすくなって、危険なだけで対策にはならないでしょう。

坂田 美穂さん

下流方向に行く、今回舗装された所を走ってきたサイクリストに話をすることができました。
何の為に舗装がされたのか分からない方が半分以上、中には舗装されている事自体気づかなかったという人もいました。
「この道は今後舗装されるのかな?」と通過した後に話しているサイクリストも。
釘撒きの件※は、実際に巻かれた現場に遭遇し、お世話になっているお店に釘を持っていったという女性もいました。
実際に走ってみると、ゆっくり走るとタイヤがとられそうになって、早く通り抜けたいという気持ちになりました。
轍は整えない限りそのまま、いずれは道全体に拡がるのかなと。
マウンテンバイクの男性の「僕たちはスピードも出ないし、出せないし、タイヤも太いから転ぶことはないけれど、ロードバイクの人は怖いかもね」と言った意見もありました。
スピードを落とすかどうかは、今後道の状態が変わってからでないと分からないと言った感じです。雨が降ってグチャグチャに荒れた後をまた走ってみたいなと思いました。

※釘撒きの件
最近発生している、荒川緊急用河川敷道路や彩湖付近などで釘が路面に撒かれる事件のこと。
パンクを狙った悪質ないたずらと思われる。

坂田 良平 (グッチャリ理事)

「安全であること」、これは(当然ながら)とても大切なことです。

今回の土系舗装と関連する一連の施策に関しては、愚策ですね。とても、とても残念ですが。
理由はふたつあります。
ひとつは、他の方のコメントや本文にもあるとおり、土系舗装は今後の劣化により事故を誘発する可能性が極めて高いことです。
もうひとつは、今回施策の目的や意義が、サイクリスト側に伝わっていないこと。残念ながら、ビラ配りの際にお話しさせていただいた多くのサイクリストは、件の舗装を「なんか変なことしたなぁ」ほどにしか思っていません。残念ですが、このような施策ではしょうがないでしょうね。

一方で、サイクリストの皆さんには、ここまで管理者側(国土交通省)が対策をせざるを得ない状況にあることを恥ずべきです。そして反省して欲しい。

今回も、そしてこれまでも、マナーアップチラシの配布活動を行っていると、「でも、歩行者やママチャリ、野球少年や子どもたちにも、ちゃんとマナーを守らせろよ!」という発言をするサイクリストがいます。
「なんで俺たちばかり…」と口を尖らせるサイクリストもいます。

理由は簡単です。
荒川河川敷というコミュニティにおいて、サイクリストがもっとも危険な凶器となりうるからです。つまり、安全ではない最大要因が、高速走行するサイクリストだからです。

確かに、道路幅いっぱいに広がって歩くお父さんお母さんと子どもたちは邪魔かもしれません。
確かに、3列にも4列にもなって並走する野球少年たちの自転車は邪魔かもしれません。

でも、彼ら彼女らは、邪魔なだけで生命の危険にはなりません(大抵の場合はね)。
でも、その合間を高速で駆け抜けるサイクリストは、明らかに安全を脅かしています。

そもそも、河川敷ってもっと自由な場であるべきですよ。一部の心無いサイクリストのために、例えば子どもたちが窮屈な想いをするのはかわいそうだと思わないのでしょうか。大人が子どもの遊び場を奪うって、それは人として情けないですよ。

人がいる場では、時速6~7kmまで落とし、つまり徐行すること。仮に徐行したって、10分徐行で走リ続ける必要はないはずです。せいぜいが5分弱でしょう。だって、荒川は広いんだから。それくらいの心のゆとりは持ちましょうよ。

今回の施策は、愚策です。しかし、そのような状況に追い込んだのは、心なく、大人げない一部のサイクリストたちです。
残念ですし、情けない。いい大人が、何をしているんだか…。今回、あらためて感じました。

黒木 尊行 (グッチャリ理事)

<土系舗装に関して>
スピードを落とさず走りきる人が多く、あまり国交省が狙った減速効果はないのではないかと感じられた。
「舗装」といいつつも、すでに自転車タイヤ幅の轍が出来ており、今後、轍が深くなり、ハンドルを取られる、不用意にブレーキをかけると滑る等の危険性が懸念される。
そうなると減速せざるを得ないので、ある意味狙い通りなのかもしれないが、子供や一般の自転車まで危険を伴う施策には反対。
道路を分けてもダメ、路面に細工をしてもダメ=暴走自転車が減らない → 次の施策 → 最終的には「自転車の通行禁止」となっても過言ではないと思う。
個人的には子供が多い公園付近や堤防からの通路付近は押し歩きでも良いと思うので、全面通行禁止になるくらいなら車止め等はもっと不便でも良い気もする。

<チラシ配りの反応>
受け取ってくれた人に話を聞いたが、意外と荒川での自転車の悪評を知らない、土系舗装が施された意味を知らない人が多かった。
知らないというより、気づきがないという感じで、自転車に関して「軽い気持ち」が荒川河川敷にもそのまま持ち込まれているのではないか。
一般道に設置された「自転車は左側通行」や歩道上の「自転車は徐行」と同じく、野球場等に設置されている「自転車は徐行」「止まれるスピードで」などの看板も、多くの自転車にとっては「風景」でしかないのではないか。
チラシ配りで何の効果があるのか?という人もいるが、グッチャリの活動は自転車に乗る人のマインドづくり。
チラシを受け取って話を聞いてくれた100人が何かを感じて、周りの何人かに話し、その話を聞いた人がまた何人かに・・・「荒川を走るときは注意しよう」と思う人が1人でも2人でも増えてくれれば良いと思う。

韓 祐志 (グッチャリ代表理事)

<サイクリストから見た土系舗装について>
路面自体は、段差舗装(縞々の小さい段差のある舗装)よりも走りやすいし、振動もさほど大きくないので不快感も少ない。細かいホコリが巻き上がるので自転車が汚れるという点では、ちょっとイヤかもしれない。パンクしたらどうしてくれよう?等という批判がTwitterに散見されたが、それはちょっと当たらない気がする。気になったのは写真にもあるが、雨が降った後?乾かないうちに多くの自転車が通ったからか、縦の筋状の轍ができていて、これがちょっと細いタイヤのロードバイクにとってハンドリングが不安定になってしまう。この轍は一度跡がついたら元に戻らないのであろうか? また、今後も雨など降った後にはこれが増えていき、縦筋の轍だらけのガタガタ道に「成長」して行くことになるのか。それこそが「スピードを落として通行させる」という意図に沿ったものになるのかもしれない。であるならば、手前から要減速の注意喚起を路面に書くなどすべきだ。

この轍がこれ以上増えることはなく、路面コンディションがキープされるとしたら、自転車の減速を促すという意味ではさほどの効果がないかもしれない。が、これが長距離に渡って続くとなると話は別。その区間はサイクリストが敬遠するようになって通行量が少なくなるかもしれない。ただしそうなったとしたらサイクリストのみの問題ではなく、他の利用者にも少なからず影響が出るに違いない。

<まとめ>
今回施工の目的は、社会実験のように試験運用の色合いが濃いように感じるのだが、もしそうだったとしたら、どうやって利用者の声を汲み取るつもりなのか?
それが非常に気になった。「舗装が変わる」旨の看板を立てるのであれば、それに合わせて「ロードバイクの速度を減じるための試験的な路面である」とうことを明示し、例えばQRコードなどからアクセスできるアンケートサイトを設置するなどしないと、この試みがスポーツバイク利用者のみならず、様々な利用者にとってどう受け止められるのか、そしてそれがどう活かされていくのかが甚だ不透明だ。
むしろその点において、一番不快感を覚えている。
今後の運用の仕方を注視して行きたい。

 

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参考:イメージハンプ

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※特に記載のない画像は、Ryohei Sakata が撮影した。