2014年3月1日から荒川下流(葛西〜笹目橋)で施行される新・荒川河川敷利用ルールが発表されました。
http://www.ktr.mlit.go.jp/arage/about/press/2014/20140131-1.html

この新ルールに関し、2011年より荒川で自転車のマナー啓発活動を続けているグッド・チャリズム宣言プロジェクトとしての感想を申し述べたいと思います。

まずはこれまで、グッド・チャリズム宣言プロジェクトから見た
荒川のルールに関する主なトピックをご覧いただきます。

・2010年6月4日 平井大橋付近にて 自転車と歩行者の死亡事故
・2010年 現利用ルール施行(施行詳細日不明)
・2011年5月8日 あらかわミーティング第1回開催(グッチャリ自主イベント)
・2011年10月29日 あらかわマナーアップミーティング第1回開催(利用ルール検討部会)
・2013年3月17日 あらかわマナーアップミーティング第2回開催(利用ルール検討部会)
・2013年4月3日 読売新聞夕刊
荒川の自転車20キロ規制断念・7月にもルール廃止
・2013年9月3日 日経新聞朝刊
国交省荒川下流河川事務所が河川敷利用ルールを改定し、自転車の時速20km以下というルールから、人が走る速度並みに「徐行」することを求める新規定を作った
・同年9月パブリックコメントを募集

上記のような経過をたどり、今回の新ルールが発表されました。

そもそもの前提として、荒川(下流:葛西の河口〜笹目橋まで)の河川敷道路は、災害などの緊急時用に使用するため、河川敷の設備として整えられた道路であり、道路交通法が適用されて警察が管理する大規模自転車道でもなく、自転車歩行者道でもない。ましてや、荒川サイクリングロード、アラサイという言葉も下流地区に関しては根拠のない呼称に過ぎない、ということを認識していただきたいです。つまり歩行者も、野球少年も、自転車も、一般道ではなく、国の管理地に自由に出入りしている、という状態なのです。

荒川の利用において自転車の問題がクローズアップされるようになったのは死亡事故が起きてから、と思われますが、そうでなくても年々増えていくサイクリストの数に伴い、必然的に他の利用者からの「苦情」が増えていたと思われます。死亡事故のような悲劇にならずとも、接触事故、自転車が転倒する事故、歩行者への暴言、スピードを緩めずに至近距離での通過、などなど、さまざまな例を私達はナマの声として聞いてきました。

現在の利用ルールは
9項目ある中、1番目に自転車の項があり、自転車はいつでも止まれるスピードで走行すること(目安として時速20km/h以下)とされています。
当初、このルールに関して自転車の関係者・団体が一切関わることなく、決められたものだと後になって聞きました。それでは、自転車乗りとして納得のいく新しいルール作りに関わろうと、青空集会を開いて集まった有志たちの意見を集め、一緒に考えました。当初は20Km/hという速度が気になって、
速すぎる、
遅すぎる、
現実味がない、
じゃあ、何キロなら?
そもそも速度メータ装着しているとは限らない、
などなどの意見が出て、どれも一理あるものの着地点が見えないままになっていました。結局、速度の「数字」に囚われていては「何のためのルールか」の本質が見失われてしまい、ルールのためのルールにしかならないことに気がつきました。

では、何が本質なのか。国交省荒川下流河川事務所の波多野所長は、河川敷道路は「自由使用」ということで緊急時用に作られた道路を解放している、と説明した後に、その「自由使用」の精神について、袖すり合うも多生の縁、利用者同士お互いを思いやって、譲り合うって使うこと。これらは昔から、日本人に備わっていた考え方、道徳なのだ、と話しました。だからこそ、自分達自らで秩序を作っていくことを望んでいると。

この考えを聞いた上で、新ルールを見ていく。
細かく決めればキリが無いし、矛盾も出てくる、しかし何も決めない訳にもいかない、そういう中でどんなモノになっているのか・・・
新ルールは
・禁止行為(法令違反行為)
・危険迷惑行為(その行為により危険、迷惑になりうる行為)
・マナー
と大きく3つに分類されている。
そもそも、「新ルール」というタイトルながらも、3つの分類のうち全部がルールではないという。ルールという言葉の定義も曖昧なのだが、そこの議論には脱線せずに、自転車の項目へと目をやると禁止でもなく、危険、迷惑行為でもなく、マナーの項目にあげられていることが注目すべき点だと思いました。
むろん、徐行の定義が時速4〜5km/h(別の国会答弁では徐行の定義が7〜8km/hと修正されたとも聞いています)とされているので、歩く速さと同じ!?ということで、より厳しくなったとも言えるのですが、私はマナーに分類されたことをどう捉えるか、そこが肝なのではないかと感じています。先述しましたが、サイクリスト自らが秩序だって、他の利用者とともに共存していく道を模索していくべきである、とのメッセージが込められているように思えます。皆さんはどう思われますか?

河川敷でマナーチラシを配布していると
「自転車ばかりでなく歩行者にもちゃんとしろ、って言いたい」
という声も聞きますが、河川敷道路では自転車は最強の「交通強者」です。
歩行者の挙動がどうあれ、自転車はいつも対応できるように心構えが必要なのではないでしょうか。強き者が弱きをたすける、相手を慮(おもんばか)ることから始まって、自分達がまず何をすべきかを考える。河川敷やら自転車だけにとどまらない話ですよね。
「でも最近はだいぶ良くなってきましたよ」と、うれしくなるようなお言葉もいただくこともあるんです。少しずつ変わり始めているのでは、と。

これからもグッド・チャリズム宣言プロジェクトは、新ルールの大きな目的、意図を汲み取って荒川での活動を続けていきたいと思います。そしてこのように荒川のサイクリストが変わった、良くなった、と言われるようにしたいです。ゆくゆくは荒川から発信された「変わった、良くなった」が日本中に広がっていき、サイクリストのマナーアップと自律性が「当たり前」になっていくことが理想だと思っています。

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