2016年9月25日(日)、今年で5回目の記念大会となる、ツール・ド・三陸が行われました。グッチャリは第1回から共催団体としてこの「被災地応援サイクリング大会」の企画運営に携わり、また多くのグッチャリ会員がサイクリングボランティアとして参加しています。当日の朝、最初は薄曇りだったものの、みるみる雲が晴れて快晴となり、雨に降られた昨年の鬱憤を晴らしました。
今年は、公称斜度19%を誇る「剛脚もののけコース」の新設や、ヨーロッパから別府史之選手が、アメリカから2回目となるグレッグ・ホッケンスミスさん、リオ帰りの石井雅史選手が駆けつけてくれるなど、大いに盛り上がりました。
その中でも、今回は特にグッチャリらしい、大型車の死角体験会という試みを「らくもび」さんとのコラボレーションとして行ったので、その模様をレポートします。
http://www.tour-de-sanriku.com/information/report.html (←ツール・ド・三陸2016の全体の様子はこちらをご覧下さい)
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ツール・ド・三陸で大型車の死角体験会を実施
2016年9月24日(土)・25日(日)の2日間、ツール・ド・三陸 2016 のスタート&ゴール会場である栃ヶ沢公園に隣接、受付会場となった陸前高田市コミュニティーホール前にて、会場イベントの一環として「大型車の死角体験会」を実施いたしました。
グッチャリの理事会では、自転車が大型車の死角に入ってしまうことで幅寄せをされたと感じるトラブルや右左折時などでの巻き込み事故の危険回避について以前より問題意識を持っておりました。そこで、サイクリストでグッチャリのメンバーでもあるバス運転士の方に相談したところ、彼がメンバーとして活動する「らくもび(=「楽」で「快適」で「判りやすい」モビリティについて考え・実践する企画集団)」の活動をご紹介いただきました。
彼らはすでにバス死角体験会を何度か実施しており、1000人のサイクリストが集まるツール・ド・三陸の会場で体験会を実施するご提案をいただきました。
こうして、陸前高田建設業協会さん、BRTを運行するJR東日本盛岡支社さんおよび岩手県交通高田支所さんにもご協力いただき、ダンプカー(2日間)とBRT車両(25日のみ)をコミュニティーホール前に展示、ツール・ド・三陸に参加するサイクリストはもちろん、会場で待機するご家族、また、お子様を含む地元住民の方々など、どなたでも参加いただける「大型車の死角体験会」を実施する運びとなりました。
↑ 撮影:高島亮太
実際に運転席に座ってミラーを見るなどの体験ができるだけでなく、死角となる位置にパイロンを立て、路面にラインを引き、現役ドライバーでもある「らくもび」メンバーの方が丁寧に解説してくれる体験会は非常に中身の濃いものとなりました。
1日目はダンプカーだけで約30名、2日目はダンプカーとバス合計で約70名程の方が死角体験され、特に、大型車の右側の死角の広さ=視野の狭さに、皆様、「こんなに近くにいるのに見えなかったのか」「これからは大型車に接近する際には注意したい」「過去の危ない場面って、運転手からは見えていなかったのかも・・・」と大変驚かれていたのが印象的でした。
これまでは、ダンプカーかバスのどちらかを展示し運転席に座るなどの“体験会”はあったものの、今回は日曜日にはダンプカーとバスの死角を同時に体験でき、それに加えて現役ドライバーが死角について詳しく解説してくれることで参加者はさらに深い理解を得ることができました。
このような催しは恐らく初めての試みとのことで(「らくもび」メンバー談)、ダンプとバスの乗り比べ、死角の違いを実際に現役ドライバーの説明付きで体験できたことは、参加者にとっても実施した関係者にとっても大変有意義なものになりました。
筆者も実際にダンプカーとバスの両方の死角を体験しましたが、最新のダンプカーの左ミラーはワイドミラーを組み合わせた複眼的構造で意外としっかりと上から下まで見えていること、後方はカメラによる目視が可能なことなど、死角を無くそうとする努力はたいへんなものであると感じた一方で、右側は車体から少し離れると全く見えていないことが良く分かり、死角はなくならないことを再認識しました。
またバスは左・右・前方直下を見る外部ミラーに加え、車内を確認するミラーがたくさんあり、後の乗降口はミラーの中のミラー(!)で確認しているなど、右側の死角に加え、運転士の負担は相当なものであることを痛感しました。
筆者は普段から路線バスや大型トラックの停車時は出来る限り後方で待つよう心がけておりますが、無理な追い越しやすり抜けはしないと改めて心に誓った次第です。
また、現役のバス運転士さんがダンプカーに乗車体験され、「死角が少なく、特に左の死角はかなり解消されている」「ダンプカーのミラーから見える範囲が左右ともバスよりも広くバスの死角の多さに改めて驚いた」「通常のイメージと逆で、人を乗せ頻繁に発信・停止を繰り返すバスのほうが死角が多く危険と感じられた」という感想を語っておられました。
ただ、これはあくまでも停車時の話であり、走行時の死角変動や個々のドライバーの注意力には個人差があり、決してダンプカーが安全であるという意味ではないことは忘れてはならないと思います。
BRTを運行する岩手県交通さんは「復興の途上であり、現在は一般の自転車はほとんど走っていないが、街が完成すればまた自転車との錯綜リスクは増えるので意識していきたい」とおっしゃっていました。
このような試みを各地で継続して行うことができれば、サイクリストの無知からくる大型車に対する思い込みが解消されることで安全意識もさらに上がり、危険の予防にも繋がると思いますので、今後もグッチャリの活動として各地で同様の大型車死角体験会を実施していきたいと考えております。
文・黒木尊行