信号無視をする歩行者の心理と認知能力を分析した研究をご紹介しましょう。
 
赤信号に対する歩行者の振る舞いについては、以下3つのグループに分類されることが知られています。
 

  • 首唱者
    赤信号であることが分かっていて、意図的に信号無視をする人
  • 模倣者
    信号無視をしている人に同調し、信号無視をする人
  • 遵守者
    首唱者に同調することなく、信号を守る人

 
ちなみに、ある研究では、首唱者:28%、模倣者:56%、遵守者:16%であったそうです。
僕の肌感覚だと、4人にひとりが信号無視の常習犯というのは、ちょっと多すぎな気がしますけど。
 
信号無視については、初めて訪れた横断歩道では行われず、日常的に利用している横断歩道において行いがちであることが知られています。
この行動傾向の背景には、「この横断歩道のことは把握しているから」という心理が働いていることが考えられます。
 
ところが、深堀りして研究すると、これが間違いであることが分かってきました。
首唱者、模倣者、遵守者のそれぞれに、「信号無視をした(信号を守った)」横断歩道について、クルマの交通量と道幅についてヒアリングを行いました。
 

  1. 交通量については、首唱者ほど、「この横断歩道はクルマがほとんど来ない」と評価をする傾向が高い。
  2. 実際のクルマの通行台数については、首唱者>模倣者>遵守者の順番で多く見積もっている。
    ただし、首唱者が正確に通行台数を把握できているわけではなく、いずれも実際よりも少なく見積もっている。
  3. 道路幅については、遵守者>模倣者>首唱者の順で、道幅を広く見積もっている。
    ただし、遵守者が正確に道幅を把握できているわけではなく、いずれも実際よりも狭く見積もっている。

 
当たり前ですが、「この横断歩道で信号無視しては危険だ!」と分かっていて信号無視をする人はいません。
信号無視をする人は、自分なりに安全だと判断をしたつもりで信号無視をしているわけですが、その根拠となるべき交通量、道路幅について、認知能力の誤りがあることが、研究の結果、判明したのです。
 
 
なお、主唱者と言えども、常に信号無視をするわけではありませんし、また模倣者も常に首唱者に同調するわけではありません。
信号無視をする人が多いと、同調する模倣者が増える傾向が観察されていますが、逆に信号を守る人が多い状況では、信号無視を抑制する効果があることが分かっています。
 
グッチャリ会員の皆さまは、歩行中といえど、信号無視はしないでしょう。
ただ、信号無視をする人を目にして、苦々しい思いを抱く人は少なくないかもしれません。
 
信号を遵守する行動は、決して無駄ではありません。
あなたが信号をきちんと守ることで、信号無視に同調する人を減らす効果があるのですから。
 
 

 
 

参考文献

 

  • 歩行者の信号無視と交差点の認知バイアスとの関連について–主観的評価と推定認知の観点から
    北折 充隆
    交通心理学研究 15(1) 1999
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  • 記述的規範と人数が歩行者の信号無視に及ぼす影響
    佐藤 祐也, 大杉 尚之
    山形大学大学院社会文化システム研究科紀要 2017.9
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  • 歩行者の信号無視行動に関する観察的検討:急ぎ要因と慣れ要因の影響について
    北折 充隆, 吉田 俊和
    社会心理学研究 2004.3
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