ba016

快くチラシを受け取ってくれたサイクリストの皆さん。

 

「グッド・チャリズム宣言プロジェクト」(グッチャリ)は、2016年11月13日、東京・荒川の河川敷で自転車走行のマナーアップの呼び掛けとゴミ拾いを組み合わせた「クリーンサイクリング」を実施した。荒川で20年以上にわたってゴミ拾い活動を続けている「荒川クリーンエイド・フォーラム」の協力を得ての活動である。

「河川敷を走るサイクリストとしてでなく、荒川を利用する市民として改めて『河川敷は誰のもの?』という問題を考えるきっかけになった」

参加者から、こんな声も挙がった、第三回させられたそうです。「第3回 グッチャリ&荒川CleanAid 『クリーン サイクリング』」の様子をレポートしよう。

 

 

止まらないサイクリストにこそ伝えたい

cba001

小春日和の穏やかな青空のもと、集まったサイクリストは12人。今回は「ツール・ド・おきなわ」と開催日程が重なったこともあり、いつもと比べて参加者はやや少なめ。参加者の半数が初参加というフレッシュな顔ぶれとなった。今回、マナーアップチラシを配布したのは、岩淵水門(東京都北区)。荒川を利用するサイクリストにとってはおなじみの場所だ。

cba004

野球少年たちも、マナーアップチラシを受け取ってくれました。

 

「すいません、ちょっとよろしいですか?」

道行くサイクリストたちに声を掛け、そしてマナーアップチラシを手渡す。「がんばってください!」と応援してくれる人、そして「以前ももらいましたよ!」と声を掛けてくれる人もいて、活動に対する認知も少しずつ実を結んでいるのかと嬉しくなる。

しかし、声を掛けても足を止めてくれるサイクリストは全体の7割ほど。何度も参加している者にとってはいつものことなのだが、初めての参加者にとってはショックだったようだ。

「止まってくれないサイクリストこそ、チラシを渡したい」─ある女性参加者がそんな言葉を発した。

 

 

 

もちろん、チラシを受け取らないサイクリストにもそれぞれの事情や考えがあって、一概に非難するのは善意の押し売りである。しかし中には、止まってチラシを受け取っているサイクリストに対して「急に止まるな!危ないだろ!」と罵声を浴びせて走り去るサイクリストもおり、サイクリスト以前に、人としての良識を疑ってしまう場面もあった。

小春日和の青空の下で行われたチラシ配り。話を聞いてくれると、心も温まる。

小春日和の青空の下で行われたチラシ配り。話を聞いてくれると、心も温まる。

ゴミを拾って気付く“みんなの”河川敷

約80枚のマナーアップチラシを配布した後は約5km上流に自転車を走らせ、戸田橋(東京都板橋区)まで移動。荒川クリーンエイド・フォーラムが参加を募った人たちと合流し、同団体の指導を受けながら約1時間、総勢41人でゴミ拾いを行った。

荒川クリーンエイド・フォーラムに協賛してくれたアルミ缶リサイクル協会から提供されたエプロン。ありがたく使わせていただきました!

荒川クリーンエイド・フォーラムに協賛してくれたアルミ缶リサイクル協会から提供されたエプロン。ありがたく使わせていただきました!

 

荒川クリーンエイド・フォーラムは荒川をメインフィールドとしてゴミ拾いを実施、自然と人との共生を考える活動を行う団体。ゴミの種類を記録しながらゴミ拾い実施し、ゴミの種類と数を確認することで参加者に“気付き”を促す取組みが特徴だ。さらにその調査結果を活かし、ゴミの発生を抑え、ゴミのない社会を目指すことを活動のコンセプトとしている。
前2回のクリーンサイクリングは、それぞれ千住大橋付近(東京都足立区)、木根川橋付近(東京都葛飾区)で行った。今回ゴミ拾いを行った戸田橋はさらに上流に位置し、より水際に近づいてゴミ拾いを行った。

そのためだろうか、ゴミの種類や数でこれまでと異なる点があった。まず前回、前々回と圧倒的に数が多かったペットボトルがとても少なかった。その反面、コンビニ袋や弁当、お菓子、カップ麺などのビニールやプラ容器、缶詰、タバコの吸殻、そして乾電池が多く見つかった。

41人が集めたゴミ。総数量はこれまでよりも少ないが、重い物が多い。

41人が集めたゴミ。総数量はこれまでよりも少ないが、重い物が多い。

 

これまで拾ったゴミの多くは、河川敷に来た人々が「これぐらいなら…」という甘い心で捨ててしまったゴミ、もしくは風などで飛ばされてしまったと想像されるゴミが多かったように思うが、今回多数回収された乾電池などは本来河川敷で頻繁に使われるようなものではない。つまり意図的に捨てられた、もっと言えば川をゴミ箱代わりに使った結果として集まったゴミが多かったように感じた。

ゴミ拾い終了後はグループごとに拾ったゴミの数を種類別に集計。その結果をグループ内でディスカッションし、気がついたこと、感じたことをグループごとに発表し、参加者全員で共有した。

 最後には荒川ゴミの現状や生態系に与える影響についての説明を受けた。


最後には荒川ゴミの現状や生態系に与える影響についての説明を受けた。

活動の最後には、荒川ゴミの現状や生態系に与える影響、そして最近世界規模での環境問題として注目されている「マイクロプラスチック汚染」(※)などについて、荒川クリーンエイド・フォーラムから説明を受けた。

※目に見えない微細サイズにまで分解されたプラスチック粒子が海洋に流れ出すことで食物連鎖によって人間も摂取し、様々な健康被害をもたらす可能性のこと

 

大切なのは互いの尊重

河川敷は歩行者のものでも、野球少年のものでも、釣り人のものでも、ランナーのものでも、サッカー少年のものでも、犬を散歩する人のものでも、ましてやサイクリストのためのものでもない。が、誰のものでもある。

河川敷ではそれぞれの利用者を尊重する気持ちを。

河川敷ではそれぞれの利用者を尊重する気持ちを。

河川敷を利用するその人が他の利用者を尊重することで、その人は河川敷という豊かな環境を利用する権利を持つ。老若男女、様々な人が目的を持って河川敷を利用する環境を維持することが、河川敷におけるあるべき姿だろう。

荒川のゴミ拾いという活動は、荒川を利用するすべての人の活動や生活をゴミという“メガネ越し”に眺める行為でもある。ゴミ拾いを通じ、サイクリストという立場を超えて荒川河川敷を利用するすべての人と場を共有することで、そんな思いを新たにした。

グッチャリは、今後も継続的にマナーアップチラシの配布活動や荒川クリーンエイド・フォーラムとのゴミ拾いを行っていく。興味を持った方は、ぜひ私どもの活動に参加してほしい。
 

ゴミを拾い終え、参加者全員が清々しい表情に。

ゴミを拾い終え、参加者全員が清々しい表情に。

(坂田良平)

 

フォトギャラリー