パネルディスカッションに登壇いただいた皆さま。

パネルディスカッションに登壇いただいた皆さま。

「自転車活用推進法」ってどんな法律?
何がどう変わって何をすればいいの?

2016年12月、足掛け16年以上の歳月をかけて国会で成立した「自転車活用推進法」。
しかし、どんな法律なのかを正しく理解している人は多くない。
そこで、グッチャリでは「自転車活用推進法 成立!どう変わる?サイクリストにとっての『自転車活用推進法』」と題したセミナー&ワークショップを、2017年2月1日に豊洲のシビックセンターにて開催した。

まずは、同法の生みの親とも言える小林成基氏(NPO自転車活用推進研究会理事長)に 『自転車活用推進法の内容や制定までの歩み』 を解説していただいた。

概要は次のとおり。

「自転車活用推進法」は例えば、自転車通行帯の整備、シェアサイクルの整備、安全性の高い自転車の供給、自転車を使った観光客誘致支援、交通安全教育および啓発などの施策を定め、自転車の活用推進における基本理念を示す上位概念である。

具体例を挙げると、これまでの法律に記載のなかったシェアサイクルについて、公共の利益になるとして普及を推奨しており、各地での更なる広がりにつなげていく。
自転車運転中の道路交通法に違反への反則金制度、損害賠償を保証する制度、さらには賠償責任保険の義務化などの検討を進めることが可能になる。
自転車の安全性の確保に関しては、性能・品質基準を政令で定め、不適合車の販売を禁止することが検討されるであろう。

つまり、これは国として制定した自転車活用の上位概念となる法律で、それに基づき各自治体などが具体的に条例などを定めて、各々の施策を実施していくための錦の御旗なのである。

国土交通大臣を本部長として官房長官や厚生労働相ら関係閣僚でつくる自転車活用推進本部が設置され、国会への報告が義務づけられるなど、国は本気モードである。

現時点ではスタート地点に立ったのみなので、今後様々な取り組みを具体的に行っていくべく、自治体などに働きかけ、声を挙げていかねばならない。

 

説明の後、ワークショップが行われ、参加者が自転車をめぐって「困っていること」、「国や自治体にして欲しいこと」などを具体的に考え、付箋に書いて提出、その意見や要望を中心に、ゲストの方々にてパネルディスカッションを実施した。

ゲストは、グッチャリ・リーダーの片山右京さん、日本ロードレース界のレジェンドである今中大介さん、サイクルロードレースの解説者として人気の栗村修さん、モデルでサイクリストの日向涼子さん、自活研の小林理事長のほか、自転車活用推進本部が設置される国土交通省のキーマンで、道路交通安全対策室の酒井洋一室長にもご登壇いただいた。

片山右京さん (グッド・チャリズム宣言プロジェクト・リーダー)

  • 「自動車業界の当法律の認識はゼロに等しい」
  • 「クルマの自動走行を見据えた環境整備が進んでいるが、クルマ側の人間から(道路環境が)定義されている」
  • 「『車はえらい、自転車は遊び』と思われているので、自転車の存在感を高めたい」と自転車とクルマの関係の将来的なビジョンも含めて道路環境を考える必要性を強調した。

 

今中大介さん

  •  「自転車の存在を示す社会的インフラが必要」
  • 「公共交通機関への自転車のそのままの状態での持ち込みや、自転車専用道路のさらなる拡充など、自転車の存在感、利用の価値、可能性をわかりやすく見せる状態を作ってほしい」と訴えた。

 

栗村修さん

  •  「日本人はルールを守る国民、クルマのシートベルトのように罰則を含めた法律が必要」
  • 「法に基づいた強制力をもつことは、日本人に合った形で自転車文化、ルールを周知する大きなきっかけになると思っている」とし、自転車の走行ルール厳格化の必要性を指摘した。

 

日向涼子さん

  •  「買い物や通勤・通学の自転車利用者の意識が大切!」
  • 「ママたちのセミナー、企業や学生の集まるところでも開催したら」
  • 「啓蒙だけでなく、メリット・経済効果や過去の成功例を伝え続けるべき」などの女性視点を含めた前向きなコメントを頂いた。

 

酒井洋一室長(国土交通省 道路交通安全対策室)

  •  「国交省では2015年から全国の自治体に対し、『自転車ネットワーク計画』を呼びかけているが、現時点で計画を作成している自治体はたった92市町村であり、全体849市町村の約1割しかない」
  • 「環境整備はトップダウンではできない。最初のトリガーを引くのは地元の方でないとできないので、住んでいる自治体に『民の声』を訴えてほしい」として、集まったサイクリストに協力を呼びかけた。

 

小林成基理事長(自転車活用推進研究会)

  •  「重要なのは市民の声。追い風を作り出さないと法律は生きてこない。全国でこのような場を設けて、自治体に繰り返し働きかける努力が必要」と、皆で力を合わせて活動することへの理解と行動を求めた。

 

 

参加者の皆さんも『民の声=民意』 というのが、これからの大きな流れを生み出すにはとても重要な要素であることを理解いただけたであろう。
グッチャリも『国が自転車を認めた』 記念すべき法案成立が呼び水となって、「より良い自転車社会」が実現していくように、さまざまな活動をして頑張って行きたく思う。

(瀬戸圭祐)

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参考

日向良子さんブログ
http://ameblo.jp/ryoko-hinata/entry-12244499264.html

栗村修さんブログ
http://www.jsports.co.jp/cycle/kurimura/post-983/